「公用文作成の考え方」を読んだのでメモ (表記の原則)
GW 2024 の自由研究ってことで文化審議会が作成した「公用文作成の考え方」を読みました。 内容・感想のメモを残しておこうと思います。
「公用文作成の考え方」について
“「公用文作成の考え方」を読んだのでメモ (基本的な考え方)” を要参照。
この記事で扱う範囲
公用文作成の考え方
- 基本的な考え方
- 表記の原則
👈 ここ
- 漢字の使い方
- 送り仮名の付け方
- 外来語の表記
- 数字を使う際は、次の点に留意する
- 符号を使う際は、次の点に留意する
- そのほか、次の点に留意する
- 用語の使い方
- 伝わる公用文のために
以下、メモの本題。感想 (ただの独り言) は斜体で書く。
1 漢字の使い方
(1) 漢字使用の原則
ア 常用漢字表にある字種(漢字)や音訓を用いる
漢字の使用は「常用漢字表」に従う。
表にある漢字 | 使う |
表にあるが、採用されていない音訓 | 使わない |
表にない漢字 | 使わない |
「絆」が常用漢字ではないことを初めて知った…。
イ 字体は常用漢字表に示された通用字体を用いる
基本 | 通用字体 (常用漢字表がそれぞれの字種を示すに当たって採用した字体) |
常用漢字表外の漢字 | 表外漢字字体表の印刷標準字体 |
外国で用いられる漢字 | その字に対応する通用字体又は印刷標準字体に改める |
ウ 固有名詞(地名・人名)には、常用漢字表にない漢字も使うことができる
- 地名は通用している書き方
- 人名は本人の意思に基づいた表記
書き換える場合は、通用字体・印刷標準字体を使う
エ 読み手への配慮に基づき、原則と異なる書き方をすることもできる
「原則とは異なる書き方」=「仮名に書き換える・振り仮名を振る」
(2) 常用漢字表の字種・音訓で書き表せない場合
(※ ×印は表にない漢字、△印は表にない音訓)
ア 仮名で書く
例 | ||
---|---|---|
訓による語 | 平仮名で書く | 嬉しい× → うれしい |
音による語 | 漢字を用いないで意味の通るものは、そのまま平仮名で書く | 御馳×走 → ごちそう |
逆に、漢字を使わないと意味が通らない言葉の例が無くて困ったけれど、多分同音異義語が相当しそう。(「しこう」は嗜好?思考?志向?)
動植物の名称は、
例 | ||
---|---|---|
一般語として書くとき | 原則に従う(常用漢字表にある -> 漢字、ない -> 仮名) | ねずみ |
学術的な名称として書くとき | 片仮名で書くことが多い(慣例) | ネズミ |
イ 音訓が同じで、意味の通じる常用漢字を用いて書く
訓が同じパターンは意外なものが多い
活△かす → 生かす
仇× → 敵
想△い → 思い
哀△しい → 悲しい
音が同じパターンは易しい漢字を使っただけって感じ
日蝕× → 日食
脳裡× → 脳裏
編輯× → 編集
ウ 常用漢字を用いた別の言葉で言い換える
捺×印→押印
- 意味が違うっぽいけれど、いいのか…?
誹×謗× → 中傷、悪口
- “誹謗中傷” って言い換えが可能な熟語を並べているのか…。
脆×弱な → 弱い、もろい
、漏洩×する → 漏らす
- IT 系でよく使われる(良くはない)単語も書き換え対象
エ 表にない漢字だけを仮名書きにする、又は、振り仮名を付ける
(no comment)
オ 振り仮名は、原則として表にない漢字・音訓のみに付ける
読み手に配慮して、熟語全体に振り仮名を付すこともある。
振り仮名は見出しではなく本文部分に付すのが一般的である。
へ〜?
カ 振り仮名が使えない場合には、括弧内に読み方を示すこともできる
Markdown (マークダウン)向けだ!
(3) 常用漢字表に使える漢字があっても仮名で書く場合
2 送り仮名の付け方
ア 送り仮名は、「送り仮名の付け方」に基づく
「送り仮名の付け方(昭和 48 年内閣告示第2号)」=「義務教育で学ぶ送り仮名の付け方」
送り仮名は漢字に添えて読み誤りを防ぎ、意味を明確にする効果がある。
送り仮名は「そうやって書くもの」として覚えていたので、明確に役割があること、今の基準が思ったより新しい(執筆時点でまだ 51年前)ことに驚いた
イ 読み間違えるおそれのない複合の語の名詞(186語)は、送り仮名を省く
例 | ||
---|---|---|
186後の名詞 | 許容を適用する | 入替え |
それ以外の名詞・動詞 | 本則に従う | 入れ替える |
許容とは「読み間違えるおそれのない場合は,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。」という決まり。
本則とは「複合の語(通則7を適用する語を除く。)の送り仮名は,その複合の語を書き表す漢字の,それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。」という決まり。
職業柄、部分的に例外を認める運用にモヤる…。
ウ 文書の性格や読み手に配慮し、送り仮名を省かずに書くこともできる
学校教育では送り仮名を省かない表記を学ぶから、公用文の表記(送り仮名を省く)を見慣れない人もいる。
例 | |
---|---|
公用文表記の原則 | 食品売場 |
学校教育で学ぶ表記 | 食品売り場 |
常に省かない、に統一すれば良くない????????
3 外来語の表記
ア 外来語の表記は、「外来語の表記」(平成3年 内閣告示第2号)に基づく
例 | ||
---|---|---|
日本語の音韻の範囲内で無理なく発音できる表記 | 第1表 | バイオリン |
原語に近く発音するための手掛かりとなる表記 | 第2表 | ヴァイオリン |
イ 日本語として広く使われている表記を用いる
- ◯ セロハン (国語として定着している)
- ✗ セロファン
バイオリン、ヴァイオリンはどちらが定着しているの…?(きりが無い疑問)
ウ 必要な場合には、原語の発音に近づくように書く
慣用がある場合、第2表を使う。
例)ウェイト ウェブ クォーク フュージョン
特に人名・地名など固有名詞は原音に近く書き表す慣用があり、例えば第2表のウィ、ウェ、ウォを用いた表記では、ウィリアム、ウェールズ、ウォール街などが広く用いられている。
一般の用語は、第1表に従って書くことが基本となる。
必要があって第2表に基づく場合には、一つの文書内で異同が生じないようにする。
例) 第1表によるもの ウイルス ウエディング ウオーター 等 第2表によるもの ウィルス ウェディング ウォーター 等
第2表によれば、バ行に「ヴァイオリン」「ヴェール」のように「ヴ」を使用できる (…) 原則として「バビブベボ」を用い、「ヴ」をむやみに使用することは慎む。
「ヴァイオリン」より「バイオリン」の方が良さそう
原語に近づけるため二つの表にない表記を用いることはしない。
例外にも限度がある
エ 長音は、原則として長音符号を使って書く
英語の語末の-er、-or、-ar などに当たるもの (…) -ty、-ry など、y で終わる語も長音符号を用いて書く。
「フォルダでカテゴリ分けする」vs 「フォルダーでカテゴリー分けする」問題の解決を迎えられて嬉しい
4 数字を使う際は、次の点に留意する
ア 横書きでは、算用数字を使う。
例)令和 2 年 11 月 26 日 午後 2 時 37 分 72% 電話:03‐5253‐****
イ 大きな数は、三桁ごとにコンマで区切る。
四桁以上の数は三桁ごとにコンマで区切って書く。
本文でも「大きな数字」ではなく、「四桁 (4桁じゃなくて?) 以上の数」と明確に書いて欲しい。
例)5,000 62,250 円 1,254,372 人
ウ 兆・億・万の単位は、漢字を使う。 例)5兆 100億 30万円
単位の漢字と算用数字を合わせて使う場合、数字だ けの場合とコンマの位置がずれることによる混乱を避けるため、コンマを省いてもよい。 例)1億 2,644 万 3,000 人 / 1億 2644 万 3000 人 (126,443,000 人)
必ず省略するルールの方が良いと思うけれど…。
エ 全角・半角は、文書内で使い分けを統一する。
(no comment)
オ 概数は、漢数字を使う。
算用数字で統一したい場合は、「20 人余り」「40~50 人」などと書き方を工夫する。
統一を促してほしかった
カ 語を構成する数や常用漢字表の訓による数え方などは、漢数字を使う。
キ 縦書きする場合には、漢数字を使う。
(no comment)
ク 縦書きされた漢数字を横書きで引用する場合には、原則として算用数字にする。
(no comment)
ケ 算用数字を使う横書きでは、「○か所」「○か月」と書く(ただし、漢数字を用いる場合には「○箇所」「○箇月」のように書く。)。
方向 | 数字 | 例 | メモ |
---|---|---|---|
横書き | 算用数字 | 「3か所」「7か月」 | ヶ ・カ ・箇 (常用漢字だけど) はダメ |
横書き | 漢数字(概数)・何 | 「数箇所」「数十箇所」「何箇所」 | |
縦書き | 漢数字 | 「三箇所」「七箇月」 |
5 符号を使う際は、次の点に留意する
(1)句読点や括弧の使い方
ア 句点には「。」(マル)読点には「、」(テン)を用いることを原則とする。横書きでは、読点に「,」(コンマ)を用いてもよい。ただし、一つの文書内でどちらかに統一する。
従来の基準は、横書きでは「,」(コンマ)を使うことになっている。
句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。
ref: 公用文作成の要領
一方、新しい基準では横書きも含めて句読点は「。」「、」を使うことを原則にしている。実際、「公用文作成の考え方」でも「、」を使う方針の言及がある。
この解説の表記は、従来の公用文表記の基準に従っている。ただし、読点については、建議が新たに示す考え方に基づき「、」(テン)を用いている。
イ 「・」(ナカテン)は、並列する語、外来語や人名などの区切り、箇条書の冒頭等に用いる。
単語を並列で書くときに ・
と 、
で迷うことが多いので、参考になる
◯: 光の三原色は赤・緑・青である。
✗: 光の三原色は赤、緑、青である。
ウ 括弧は、()(丸括弧)と「」(かぎ括弧)を用いることを基本とする。()や「」の中に、更に()や「」を用いる場合にも、そのまま重ねて用いる。
括弧を入れ子で使っていいか迷うことがあったけれど、安心して使える!
後述の 「カ」「キ」の情報も合わせた表:
() ・「」 | 基本 |
『』 | 「」 の中で使う |
【】 | 強調するときに使う |
それ以外 | むやみに使わない |
エ 括弧の中で文が終わる場合には、句点(。)を打つ。ただし、引用部分や文以外(名詞、 単語としての使用、強調表現、日付等)に用いる場合には打たない。また、文が名詞で 終わる場合にも打たない。
後述の 「オ」「キ」の情報も合わせた表:
状況 | 句点を打つ/打たない | 例 |
---|---|---|
括弧の中で文が終わる場合 | 句点を打つ | (以下「基本計画」という。) 「決める。」と発言した。 |
引用部分や文以外(名詞、単語としての使用、強調表現、日付等)に括弧を用いる場合 | 句点を打たない | 議事録に「決める」との発言があった。 「決める」という動詞を使う。 |
括弧内の文が名詞で終わる場合 | 句点を打たない | (例がない) |
文末に括弧があり、それが部分的な注釈である場合 | 括弧の後に句点を打つ | 当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している(日程は未定である。)。 |
文末に括弧があり、二つ以上の文、または文章全体の注釈である場合 | 最後の文と括弧の間に句点を打つ | 当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している。(別紙として、決定に 至った経緯に関する資料を付した。) |
そこで文が終わっていることがはっきりしている場合 | 括弧内の句点を省略することがある | 年内にも再開を予定しています(日程は未定です)。 |
オ 文末にある括弧と句点の関係を使い分ける。文末に括弧がある場合、それが部分的な 注釈であれば閉じた括弧の後に句点を打つ。二つ以上の文、又は、文章全体の注釈であ れば、最後の文と括弧の間に句点を打つ。
(略)
カ 【 】(隅付き括弧)は、項目を示したり、強調すべき点を目立たせたりする。
(略)
キ そのほかの括弧等はむやみに用いず、必要な場合は用法を統一して使用する。
(略)
(2)様々な符号の使い方
ア 解説・広報等においては、必要に応じて「?」「!」を用いてよい。
必要なケース:
- 「?」を用いないと意味が通じない
- 「!」を用いた方がより明快に伝わる
「?」「!」の後に文が続く場合には、全角又は半角1文字分空ける。
空けた方がいいんだ?! 気をつけよう!
イ 他の符号を用いる場合には、文書内で用法を統一し、濫用を避ける。
他の符号の例:
:
―
‐
~
...
*
※
/
ウ 矢印や箇条書等の冒頭に用いる符号は、文書内で用法を統一して使う。
(no comment)
エ 単位を表す符号を用いる場合は、文書内で用法を統一して使う。
(no comment)
6 そのほか、次の点に留意する
ア 文の書き出しや改行したときには、原則として1字下げする。
1字下げをすることによって行頭に余白が生まれるので、視覚的に段落と段落の区別がしやすくなります。
字下げは段落を分かりやすくするためのものなので、
- 原則、一字下げする
- メール、SNS は(段落を意識することがないから(本当か?))なくても良い
- 字下げ以外の方法(段落間を広く空ける)でも良い
イ 繰り返し符号は、「々」のみを用いる。2字以上の繰り返しはそのまま書く。
(no comment)
ウ 項目の細別と階層については、例えば次のような順序を用いる。
(no comment)
エ ローマ字(ラテン文字。いわゆるアルァベットを指す。)を用いるときには、全角・ 半角を適切に使い分ける。
「適切」=「全角・半角の使い分けを文書内で統一する」
オ 日本人の姓名をローマ字で示すときには、差し支えのない限り「姓―名」の順に表記 する。姓と名を明確に区別させる必要がある場合には、姓を全て大文字とし(YAMADA Haruo)、「姓―名」の構造を示す。
グローバル社会の進展に伴い,人類の持つ言語や文化の多様性を人類全体が意識し,生かしていくことがますます重要となっており,
(略)
公用文等において,日本人の姓名をローマ字表記する際は,原則として「姓―名」の順で表記する
カ 電子的な情報交換では、内容が意図するとおりに伝わるよう留意する。
「意図するとおり」=「文字化けしない」
キ 読みやすい印刷文字を選ぶ。
書体・色・大きさに気をつける
ク 略語は、元になった用語を示してから用い、必要に応じて説明を添える。
例)クオリティー・オブ・ライフ(Quality of Life 。以下「QOL」という。)
ケ 図表を効果的に用いる。図表には、分かりやすい位置に標題を付ける。
「効果的」=
- グラフ
- 軸の名前、凡例が書かれている
- 適切なグラフの種類を選択している
- 表
- 列間や行間に余裕がある
- 共通
- 一目で内容が分かる
- 内容を一言で表現するタイトル、説明がある
- 配色
- 色覚の多様性に配慮している
- 印刷を考慮して多色を用いない
- 白黒になることも想定している
- 四角で囲んで強調しても良い