「公用文作成の考え方」を読んだのでメモ (基本的な考え方)
GW 2024 の自由研究ってことで文化審議会が作成した「公用文作成の考え方」を読みました。 内容・感想のメモを残しておこうと思います。
「公用文作成の考え方」について
「公用文作成の考え方」は府省庁が作成する公用文の書き表し方の原則をまとめたものです。 同じ目的の文書1 が建議(意見を申し立てること)から70年経っていることもあり、 実態や社会状況との食い違いが大きくなっていることから
これからの時代にふさわしい公用文作成の手引とする
ために見直しが行われました。
公用文の範囲は「府省庁が発する文書」から「SNSアカウント」までと様々であり、読み手が一般の人を想定している文書も含まれます。 そのため、一生公用文を作ることはないであろう私にとっても、部分的に文書作成の参考にすることが出来そうです。
文書の構造
「公用文作成の考え方」は手引きの本文とその解説の2部構成になっており、
- 公用文作成の考え方(文化審議会建議)
- (付)「公用文作成の考え方(文化審議会建議)」解説
本文内の各項目と解説内の各項目は対応しています。
- 基本的な考え方
- 表記の原則
- 用語の使い方
- 伝わる公用文のために
見直しの理由
(本題から逸れますが、面白かったので)
検討状況(案)2に見直しの理由である「食い違い」の例が書かれていました。
- 「公用文」の変化への対応
- 「府省庁が作成する文書」=「公用文」と考えることも出来るけれど、広報用のウェブサイトなどは現行の要領の想定から外れている(そりゃ、昭和の建議だからね…)
- 法令と同じ表記を公用文でも用いる原則を維持しつつも、国民向けの文書は分かりやすく伝えるために弾力的な運用を認める必要がある
- 現行の要領は表記・用語に注目しているけれど、追加で、伝わりやすさの考え方を示す
- 社会の多様化と日本語の変化への対応
- 日本語を母語としない人向けの文書作成の考え方も必要
- 専門用語・外来語の使い方の考え方も必要
- 実態を踏まえた日本語表記にする
左横書きの公用文における読点には、「,」(コンマ)を用いることとされてきたが、実際の社会生活においては、「、」(テン)が用いられることが多い。
コンマを使うルールがあることに驚いた…。
以下、メモの本題。感想 (ただの独り言) は斜体で書く。
この記事で扱う範囲
公用文作成の考え方
- 基本的な考え方 👈 いまここ
- 公用文作成の在り方
- 読み手に伝わる公用文作成の条件
- 表記の原則
- 用語の使い方
- 伝わる公用文のために
1 公用文作成の在り方
(1)読み手とのコミュニケーションとして捉える
ア 読み手に理解され、信頼され、行動の指針とされる文書を作成する。
公用文は「必要な行動を起こすきっかけ」になるべきで、そのために必要な要素が:
- 理解される
- 信頼される
「理解される」ためには、読み手の存在や読み手が知りたいことを意識するべき。
信頼について踏み込んだ言及がこのセクションにない…理解される文書であれば信頼される?
イ 多様化する読み手に対応する。広く一般に向けた文書では、義務教育で学ぶ範囲の知識で理解できるように書くよう努める。
読み手には様々な人がいるから、読み手の理解力に頼らない。
「読み手の理解力に頼らない」 = 「義務教育で学ぶ範囲の知識で理解できる」
ウ 地方公共団体や民間の組織によって活用されることを意識する。
公用文は易しい日本語に書き直されることが多いから、最初から読みやすいものにする。
他の場所で読み手に従った書き直しが発生するから、公用文は厳密さを優先していると勝手に想像していた
エ 解説・広報等では、より親しみやすい表記を用いてもよい。
原則とは異なる読み手に合わせた工夫が必要なときもある。例えば、常用漢字を使わない、振り仮名をつける。ただし、ばらつきはだめ。
オ 有効な手段・媒体を選択し、読み手にとっての利便性に配慮する。
インターネットで広く公開するだけでなくアクセシビリティも考慮する。
アクセシビリティは有効な手段として選択するのではなく、常に意識するものだと思うけれど…。
文書の責任の所在を明らかにすることも言及しているけれど、読み手の利便性にどう繋がるか分からなかった
(2)文書の目的や種類に応じて考える
大別 読み手 手段・媒体の例 告示・通知等 (※ 法令に準ずる) 専門的な知識がある 府省庁が発する文書 記録・公開資料等 専門的な知識が少しある 府省庁ウェブサイト 解説・広報等 専門的な知識がない 同SNSアカウント
(表)公用文の分類例
を元に恣意的に抜粋した表
ア 原則として、公用文の表記は法令と一致させる。ただし、表「公用文の分類例」がおおよそ示すとおり、文書の目的や種類、想定される読み手に応じた工夫の余地がある。
“本文”と”解説”でニュアンスが違う気がする。
“本文”では 原則として、公用文の表記は法令と一致させる
とあるとおり法令 (一番難しい文書のはず) を基準に考えているが、
“解説”では 日本で日本語を用いて生活している人であれば、 誰でも読めて理解できるものとすべき
とある通り、最低限の難易度を基準に考えている (ように私からは見える)。
いずれにしろ、「想定する読み手」を意識した文書作成を求めている。
イ 法令に準ずるような告示・通知等においては、公用文表記の原則に従って書き表す。
一定の拘束力や実効性を持つ告示・通知等においては、正確さを保証するために法令で用いる語をそのまま使う。
ウ 議事録、報道発表資料、白書などの記録・公開資料等では、公用文表記の原則に基づくことを基本としつつ、必要に応じて読み手に合わせた書き表し方を工夫する。
専門的な知識を持たない読み手を意識し、分かりやすい書き方が求められる場合がある。
エ 広く一般に向けた解説・広報等では、特別な知識を持たない人にとっての読みやすさを優先し、書き表し方を工夫するとともに、施策への関心を育むよう工夫する。
全ての国民が読み手となり得ることを意識しておく。
2 読み手に伝わる公用文作成の条件
伝わる条件 = 「正確」+「分かりやすい」+「気持ちに配慮している」
(1)正確に書く
ア 誤りのない正確な文書を作成する。誤りが見つかった場合には、速やかに訂正する。
「正確」=「誤りがない(情報が間違っていない)」+「過不足がない(必要な情報が欠けていない / 余計な情報が含まれていない)」
解説では「正確」を 2 つの要素に分解しているが、誤りがあった場合の対応(速やかな訂正)を紹介している一方、過不足が発生した場合の対応の言及がない。けど多分同じ。
イ 実効性のある告示・通知等では、公用文の書き表し方の原則に従う。
告示・通知等は一定の影響力を発揮するので、法令と同じ正確さが求められる。そのため、
- 公用文の書き表し方を守る
- 表記の揺れを防ぐ
- 誤読・複数の意味に解釈されることを防ぐ
- データに誤りを出さない
- 難しい表現には説明や注を付ける
ウ 基となる情報の内容や意味を損なわない。
一般の人向けには正確さを保ちつつ(基となる情報の内容や意味を損なわずに)分かりやすく言い換える。
意味が損なわないなら、最初から簡単な表現で大本の文書 (このセクションだと法令や告示) を書けばよいのでは…?
エ 関係法令等を適宜参照できるように、別のページやリンク先に別途示す。
ソースを出せ!ってやつ。
オ 厳密さを求めすぎない。文書の目的に照らして必要となる情報の範囲を正確に示す。
専門用語やデータを用いて正確さを確保しても分からない人がいる。なので、伝えるべき内容に従って情報を絞って伝える。
(2)分かりやすく書く
ア 読み手が十分に理解できるように工夫する。
一般の人向けの文書(解説・広報等)では、分かりやすさを重視する
「分かりやすい文書」=「読み手が内容を十分に理解できる」=「伝える内容を絞る」+「表現の工夫(言い換えや具体例を用いる)」
イ 伝えることを絞る。副次的な内容は、別に対応する。
分かりやすさが重視される文書では、優先して伝えるべき情報を絞り込んでおく。
絞ると過不足がないの関係が分からない
ウ 遠回しな書き方を避け、主旨を明確に示す。
読み手に察しさせない
- 主旨を明確に示す
- 伝えるべきことをはっきり述べる
- 周辺にある事柄や、例外的なものから説明することは避ける
エ 専門用語や外来語をむやみに用いないようにし、読み手に通じる言葉を選ぶ。
文書を分かりにくくする原因の例:
- 専門用語
- 行政特有の言い回し
- 外来語
対策:
- 言い換え
- 説明や注を付ける
オ 図表等によって視覚的な効果を活用する。
(no comment)
カ 正確さとのバランスをとる。
理想は
分かりやすく正確な文書を作成する
だが、両立しないケースもあるので、
十分点検する。
(3)気持ちに配慮して書く
ア 文書の目的や種類、読み手にふさわしい書き方をする。
読み手が誰であるのかを常に考えながら書くことが必要となる。むしろ、読み手が限定されない場合の方が多いと考え、広く通用する言葉を使う意識を持っておくとよい。
具体的な読み手を想定すればいいの?それとも、読み手の範囲を広げる(つまり抽象度を上げる)方がいいの?どっち???
イ 読み手が違和感を抱かないように書く。型にはまった考え方に基づいた記述を避ける。
- 「年配の方でも簡単に申請できます。」 -> 「高齢者は申請が苦手である」という考え方が隠れている -> 気を悪くする可能性
- 「帰国子女」-> 本来は何ら問題のない言葉であるが、女性に限定した言い方という誤解を受ける可能性
前者はステレオタイプな発言と言えるけれど、後者のように勝手に誤解するケースはどこまで考慮するべきなのだろう…
ウ 対外的な文書においては、「です・ます」体を基本として簡潔に敬意を表す。
過度な敬語によって
- かえってよそよそしい響きになる
- 分かりにくくなる
ことを避けるために、「簡潔に敬意を表す」。
が、過度な敬語はよそよそしくなったり、分かりにくくなる。
エ 親しさを伝える。敬意とのバランスを意識し、読み手との適度な距離感をとる。
傾向として:
- 漢語・名詞的表現を使う -> 対象が客観化されて距離感が大きくなる
- 和語・動詞的表現 -> 親しさの印象が増える
例:
- 災害による住宅の全壊など、生活基盤への甚大な損害が生じた被災世帯への支援金支給
- 災害で住宅が全壊するなど、暮らしの基盤を大きく損なう被害を受けた世帯の方へ、支援金が支払われます。